中枢神経と動物の変異

<記憶の形状>

(2018.1.11~)

カンブリア爆発と呼ばれる多くの動物門が出現したと言われている時代の初期、もしくはそれ以前にプラナリアのようなシンプルな中枢神経機能を持った動物が出現しました。

現在のプラナリアには「目:視神経」がありますが、カンブリア爆発当時のプラナリアに同じように目が誕生していたかどうかは分かりませんが、これより以前には光の受容体細胞が集団化し、明暗を判別する器官を持ちながらプラナリアよりもっとシンプルな中枢神経を持った動物がいたであろうという事も推測されます。

「目」が誕生したおかげで記憶しなければならない情報量がそれまでに比べ圧倒的に増え、中枢神経が飛躍的に発達したと考えられます。

また、目があることによって餌を捕ることにも圧倒的に有利となり、加えて、他の生物の餌食になることから逃避することも有利になったはずです。

このように目の出現により、競り合いが増え、それに適応するように甲羅のような外骨格ができ、それまでの柔らかい生き物と比較して化石として残りやすくなったため、その時期に爆発的に増えているように見えるという説が最近になって唱えられました *1

話は変わりますが、近年、脳研究が活発となり、記憶のメカニズムに関する様々な説が唱えられています。しかしながら、調べれば調べるほど疑問は増すばかりといった状況で、明確な答えは示されておりません。

ヒトが普段、生命活動を行う際には、常に意識が働き、「記憶する=インプット(入力)」と「思い出す=アウトプット(出力)」が行われていることは明白です。

この「記憶する」時に脳を中心とした中枢神経内で何も「形が変化しない」事は非科学的と捉え、必ず、何か物理的・化学的変化が起こっているという事を改めて提起いたします(①:意識は形状変化を伴うもの)

繰り返しますが、記憶するという事は中枢神経に何かしらの形が刻み込まれる事を意味し、思い出すという事は刻み込まれたその形を読み取っている事を意味すると考えます。世界にはこれと同様のことを提起している脳研究者も数多く存在します。

例えばコンピュータの記憶装置であるHDD(Hard Disk Drive)は磁性粒子のS極/N極の向きの変化であり、SSD(Solid State Disk=フラッシュメモリ)では、電子の移動がそれにあたります。

しかしながらヒトの「記憶する」という現象は「何をもってその現象を起こしているか」について神経細胞(ニューロン)やシナプスが関係しているということが言われているぐらいで、具体的な物質は判明していない状況ですが、直感的には、いくつかの段階(レベル)が存在することは想像できると思います(記憶レベルの表:図1)

 

記憶レベルの表

図1:記憶レベルの表

基本的に短期的な記憶は思い出す回数がまだ少ないために忘れやすく(形を失いやすく)もあり、長期的な記憶は思い出す回数が多かったために刻み込まれた形の数が多かったということです。

ではこの「刻み込まれる形」とは何なのか?という事になりますが、これは化合物1分子なのか、1原子なのか、1電子なのか、あるいは1細胞なのかは今のところ全く分かりません。

 

<用不用説とエピジェネティクス>

チャールズ・ダーウィン(英)が唱えた「進化論」の基本的な考えは「自然淘汰」です。生物は突然変異などにより新たな機能の獲得をすることで、環境に適応したものだけが生き残るという「適者適存」という考えです。

それより以前に、ジャン・バティスト・ラマルク(仏)は「用不用説」を唱えました。

よく使用する器官は発達し、使用しない器官は退化していくという考えで、{生物は「環境」と「意思」の働きによって直線的に進化する}というものです。

この主張は多くの人が納得し、受け入れられ易いにも関わらず、科学的に証明する理論が成り立たないこと、また【「意思」によって形質が変わるとは考えにくい】がために、事実として受け取られていないという現状が長く続いています。

ここで下記の図(図2)をご覧頂くと分かりますが、この二つの理論は相反するものではなく「用不用説」は変異を起こす力(種を増やしていく力)の一つであり、同軸(横軸)に突然変異やレトロトランスポゾンなどが存在します。

自然淘汰はこの横軸への広がりを抑制する力となっていると考えるのが普通のように見えます。

また余談ですが、冒頭に挙げたプラナリアなどは数億年にかけて形が変わらず種が保存された生物種と考えられますが、これらは自己再生能力がとても高く、例えば体の99.6%を食いちぎられても元の個体に再生する能力があるため、変異を起こすことは種の保存に反することであり、現状の機能が保存されたと考えられます。

動物の変異と種の保存力

図2:動物の変異と種の保存力

 

ここでエピジェネティクスの説明をいたします。

この20年ほどの間に、ゲノムに化合物(メチル化-CH3やアセチル化-COCH3)が結合することで、ゲノムの構造がバネのように収縮したり伸長したりすることが提起され、このような後天的な作用でも遺伝子の発現(転写・翻訳)に変化が生じることが分かってきました(図3)。また、このようなエピジェネティクスの作用を利用して哺乳類の一部では「ゲノムインプリンティング」という形で父親由来の遺伝子、もしくは母親由来の遺伝子に「しるし」を付けて発現調整を行っていることも判明してきております。

エピジェネティクス

図3 エピジェネティクスの概念

以前はたんぱく質の機能異常が起こった場合は、遺伝子突然変異が起こりたんぱく質の構造変化により機能異常が発生すると考えられておりましたが、このエピジェネティクスの概念により、遺伝子配列に変化が起きなくてもタンパク質の機能異常が起こることが説明できるようになりました。このことは体内に取り入れた化学物質が簡単なメカニズムで遺伝子発現を長期的に抑制したり、あるいは過剰に発現し続けたりすることができることを意味します。実際にがんなど病気の発生メカニズムに関与することなどが分かってきており、すでに創薬のターゲットとして応用されている例も見受けられます。

このように後天的な作用によって長期にわたり遺伝子発現が制御されるということは、1個体の動物の機能にも長期的な「変化」をもたらします。その「変化」のうちの一つが「病気」と言うことができ、エピジェネティクスの機構が慢性的な病気の発生に大きく関与していてもおかしくはありません。

話は変わりますが、一度筋力トレーニングなどで身に付けた筋肉はその後使わないとすぐに落ちてしまいます。しかしながら、落ちてしまっても、また完全に1からスタートとはならず以前より少ないトレーニングで筋肉は復活します。これは筋線維の数と量がトレーニングにより増えたとき、それが一度形状記憶され、そこに戻れる機構があるということです。筋肉は目に見えるので分かり易いですが、反射神経や手先の器用さなども同様のことが実感出来ます。

このように1個体において、神経の数や量、筋線維の数や量を生存していく中で増加させることができます。これは用不用説を否定した時に言われた【「意思」によって形質が変わるとは考えにくい】ということを1世代においては否定することができます。なぜなら動物は「意思」によって行動し、神経の数や筋線維の数を増やすことが可能であるからです。また、この神経数や筋線維数の増加が世代を超えて受け継がれる機構があることに疑いの余地はないはずです。突然変異と自然淘汰だけであれば旧時代の「サル」の中に突然「ヒト」の頭脳を持った個体が現れ、その個体の子孫だけが残り今に至るという事になってしまいます。「サル」から「猿人」と長期にわたり世代を通して脳を初めとする中枢神経を使い続けてきたからこそ、ここまで脳が発達したと考えるのが自然です。

各動物種は見かけ上、大きく違うように見えるかもしれません。「ヒト」と「ミミズ」が似ているというと驚く人も多いと思いますが、「ミミズ」には神経も血管も消化器官もあります。動物はそれぞれが住む生活環に合わせて行動が違ったことで、神経数量や筋線維の数量が変わっていったことでしょう。【進化】というと質の変化ばかり想像しますが、神経などの「数量変化の蓄積」が質の変化(外観)につながったものと考えています。

 

<脳髄液を渡る次世代への伝播>

そうなると中枢神経に刻み込まれた「しるし」を次の世代へ伝播することができなければなりません。

まずはその前に生物の雌雄について考えていきます。

生物はメスが基本形です。オスが存在しなくても単為発生(受精せずメスだけで次の世代が生まれて育つこと)をおこなう生物は哺乳類以外ではまれな事ではありません。ヒトの場合でも、Y染色体が分化・発生時に後から働くことでメスの基本構造がオス化していきます。この時に外見が最も異なるように見えますが、身体中の全ての臓器や器官が多かれ少なかれ変わります。脳もそうです。身体はオス化しても、脳が上手くオス化しない事は、よく起こります。レズよりもゲイが圧倒的に多いのはこのようにメスが基本形であることが主な理由といえます。

とはいえ「動物の臓器」については節足動物、昆虫、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類など非常に幅広い種別においても、構造と機能はかなり共通しています。要するに長期間にわたり変異をしていないという事です。それに比べて、骨格系、筋系、皮膚、消化器官(口から肛門までは体外)には種ごとに違いが大きく、変異が起こります。

以前に胚操作と核移植の手法を用いた発生研究*2において、オスーメスの受精で発生する(要するに通常の発生の)胎盤と胎児に比べて、メスーメスの掛け合わせによる発生では、胎盤の発達は未熟であり、胎児は比較的発達が良いことが分かっています(図4)。その胎児の細胞を用いて、より詳細な分化能(メスからの遺伝子が大きく寄与する身体の部位は何か?)を調べると、生殖細胞、脳、心臓、腎臓、脾臓などへの発達の寄与が高いことと、骨格系、筋系、肝臓、すい臓への寄与は低いことを示唆しています。それに反して、オスーオスの掛け合わせによる発生では、胎盤は通常より大きく発達しながら、胎児は未熟であることが分かり、また先ほどと同様に、オスからの遺伝子寄与についての詳細な分化能を調べると、骨格系、筋系、心臓などへの発達の寄与が高いこと、脳への寄与は低いことが分かりました(図4)

 

図4 国立遺伝学研究所「遺伝学電子博物館」ゲノムインプリンティング~父親母親由来ゲノムの役割分担(図1)より

このことから、メス側には臓器や脳を中心とした【インナーボディプラン】を保持する能力があり、オス側には骨格系や筋系、皮膚を中心とした【アウターボディプラン】を変える能力があるのでは?と推察されます。

普段はメスだけで世代交代を行う動物の中にミジンコがいます。自分が住んでいる池などの栄養状態が良い時は単為発生で世代交代を行っていますが、飢餓状態に近づくとオスが現れて受精を行うようになり、受精によりメスは飢餓環境に耐えうる耐性卵を生むようになります。メスがメスのみを生み出す単為発生ではほとんど自分のコピーに近い個体が増える状況となりますが、受精が介在すると精子は一匹ごとにゲノムが違うため様々な変異が入ってきます。ヒトにおける兄弟の違いと同じものです。外部環境の変化(特に気温や日照、運動能力の必要性)に対応するためにはアウターボディプランの変化が特に必要であることでしょう。分かり易い例では、生物が進化の過程で陸上に上がったのち、気温と日照に耐えうるため、それまでの魚類の鱗は爬虫類の鱗や哺乳類の体毛に変化し、その後爬虫類の鱗は鳥類の羽毛に変化していきました。

鱗から体毛に変化したと聞くと【質の変化】が起こったように感じますが、実際には「同じ遺伝子=同じ蛋白質」であることも多く、変異は【量の変化】であることが分かります。

ある個体がその寿命の中で経験したこと、記憶したこと、よく行ったことなどが、何かの形で「しるし」として個体内に残ります。例えば、よく指先を使う仕事をして、その部分の神経細胞が増えたり、筋肉が増えたり

 

 

 

 

 

 

<糖の過剰摂取と脳の発達による酸素依存>

今より10年前はまだ地球の全体像を見ることが出来るのは宇宙飛行士だけでしたが、現在ではインターネット状でgoogle マップを用いると、航空写真からそれを誰でもいつでも見ることが出来るようになりました。

中でも環太平洋地域と言われ大陸プレートが移動して出来あがったと思われる陸と海の境界に近い沿岸は、プレートの沈み込みによって非常に大きな溝(海溝)と大陸棚ができており、これまた非常にきれいな境界線を描いています。それらの海溝とは別に、よく見渡してみると違和感のあるひっかき傷のようなものが地球表面のあちこちに存在することが分かります。

一つは中南米カリブ海のキューバとジャマイカの間に存在する、幅100kmー長さ1000kmほどにも達するもの、または、パプアニューギニアやビスマルク諸島の北部で約200kmにわたる縦長の傷、パラオの北東部、マダガスカル北部、北極にある蛇のような形、ハワイの東、ペルーやチリから西に1500kmほどの場所にあるいくつかの痕跡、あるいは、地上で例を挙げますとバイカル湖やウイグル自治区の楕円形など、従来唱えられている「パンゲア説」の大陸移動のみでは考えられない地形が数多く存在します。これらは隕石痕のようにも見えます。

話は変わりますが、地球は3つの回転運動をしており、太陽の周りを1年かけて周回する「公転」、地軸を中心に1日かけて自身が回転する「自転」、それとコマが倒れる前にするのと同じような地軸が傾き円を描く「地軸の回転」です。中でも「地軸の回転」は太陽から地表に向かう角度が変わるため、地球の温度への影響は大きいと考えられます。

生物は約35億年の歴史があると言われておりますが、その長い歴史の中で5度の大きな絶滅期を迎えていた形跡が化石などから分かってきております。その原因はおおむね隕石や小惑星が超高速(音速数百~数千以上)で衝突し、それがマントルまで到達することでスーパープルームといった大規模で超長期的な火山活動を引き起こしたことが考えられます。隕石の中には地球をかすめて行った物や突き抜けた物もいくつかあったことでしょう。恐竜など生物の絶滅原因について、隕石か?火山活動か?とそれらは分けて考えるのではなく、隕石が大規模な火山活動を引き起こしている可能性は往々にしてありえます。

恐竜は1億5千万年ほどの長い間、地球上(または海洋)で繁栄をしました。原始人間の誕生が数十万年前であることを考えると想像を絶する長期間の繁栄でした。それは地球上の気候変動が少なく穏やかな気候だった事を意味します。

恐竜や裸子植物の大型化から推測するとその頃の地球は非常に温暖な気候であったことが予想され、これは地球の地軸が安定していたことも意味します。

その後、恐竜の繁栄は今から約6500年前に終わりを迎えます。ユカタン半島付近に隕石落下の形跡があることは以前から知られていますが、インド半島の西部にも近年隕石落下の形跡があることが言われるようになりました。このことが直接のきっかけかは不明ですが、インドにあるデカン高原はこの前後300万年ものあいだ、脈々と火山活動を続けて現在のような高原が出来上がったと言われており、このときの噴煙が地球の気温を長期間に渡って下げた原因とも言われております。それにより、地球は以前に比べ大幅に寒冷化し植物は裸子植物から、寒さに強い種子が皮に囲まれた被子植物へと変異していきました。裸子植物が主食だった草食恐竜は個体数が減り、なおかつ被子植物が作り出す「果実」の取り合いにおいても他の動物に負けてしまい、地球上から消えていきました。この樹上にある「果実」の取り合いにおいての勝者は、【昆虫】【鳥】【蛇】と人間の祖先となる【サル】でした。考えによっては恐竜は絶滅したのではなく、鳥や蛇、その他の小型爬虫類に変異したと考えるべきかもしれません。

これら「果実」の取り合いの勝者は、果実に豊富に含まれる糖(果糖、ぶどう糖などの単糖類)を積極的に摂取し、それに比例するように糖を主要エネルギーとしている中枢神経が発達していきました。特に樹上で敏捷に移動することが可能で、手を起用に使う事が出来た【サル】が最も取り合い競争において有利だったことが予想されます。

その後、「サル」から「ヒト」へ中枢神経の発達と共に変異していき、現代まで続きます。余談ですが本能的に昆虫や蛇が嫌いな人が多いのは、この争いが原因かもしれません。

近代~現代人は米や小麦など安定的に炭水化物を摂取することが出来るようになったおかげで、それまでに比べ寿命が飛躍的に伸びました。これらは主に「でんぷん」が主であり、唾液のアミラーゼででんぷんの糖鎖が切断されていき、数個~数十個の糖鎖であるオリゴ糖や、二糖・単糖などに分解されます。オリゴ糖は乳酸菌やビフィズス菌などいわゆる善玉菌の栄養源になることも知られています。このようなでんぷんの摂取のみでは過剰に単糖を摂取することはまれでしたが、近年では特に飲料や菓子に過剰な単糖が添加されており、昔に比べると極端に摂取量が増えた物質の一つです。

このことは体のあらゆる部分に悪影響を及ぼすはずですが、麻薬と同じで依存性があり、また脳を初めとする中枢神経のエネルギー源という事もあるため、摂取を控えることに対して「脳が言い訳をする」ことが頻繁に見受けられます。<~2018.7.18>

<2019.5.27~>今まで糖はあまり悪者にはされずに、塩分と脂質が不健康の代名詞として悪者にされていました。塩分が悪いのは血管が硬化し高血圧になり血管疾患につながるということが一般的に言われています。

WHO(世界保健機構)は成人における塩分の摂取量を1日に5g以下にするよう指針を出しています。日本人は男女合わせて平均11g摂取しています。だから日本人は塩分を減らさなければいけないか?というと、そんな事はありません。なぜなら、摂取量が倍以上でありながら日本人は世界の中で最も長寿だからです。

マスメディアを介して権威がある機関や有名人が発した情報だからそれが正しいと大衆は受取りがちですが、そうとは限らないのです。

日本は都道府県別に違う食文化があるため、塩分の摂取量にも差があります。少し横道にそれますが、統計データを見ながらデータの考察について、グラフとともに述べます。

まずは都道府県別の寿命と塩分摂取量の関係からです(図4)

*熊本県のデータは震災の影響を考慮し一部省略しております。

図4 寿命_塩分摂取量/野菜摂取量

2015年及び2012年の塩分摂取量ともども寿命との相関性はほとんどありません。また、よく健康のために良いと言われている野菜の摂取量と寿命にも相関性はほとんど無いようです。高寿命側で7位の愛知県は47都道府県中最も野菜の摂取量が少なく、逆に野菜摂取量が全国2位の福島県は40位、野菜摂取量が全国4位の青森県は最下位となっています。

図5 寿命_生鮮肉/酒/カップ麺

引き続きデータを見ていきますと、寿命と生鮮肉はほとんど相関性がありません。寿命とお酒の摂取量は短命の都道府県ほど、摂取量が多くなっている傾向が見て取れます。同様に寿命とカップ麺の摂取量も短命の都道府県ほど、摂取量が多くなっている傾向があります。

それ以外の様々な食物(米、小麦、納豆、卵、くだもの等)に関して同様の比較をしましたが、ほとんど相関性は確認できませんでした。ただ、その中で一つ相関性が高く出ているものがあり、それは「干物」でした(図6)

図6 干物摂取量_寿命/がん罹患率/脳梗塞死者

ここで一度、統計データが示している物が何かを考えてみたいと思います。

この干物のデータから、「人の寿命やがんや脳梗塞死者の全ての原因は「干物」である」と結論付けて良いのでしょうか?

そんなことは無いと誰もが分かるはずです。なぜなら、他にも原因があることが分かるからです。

しかしながら、誰もが、自分が良く分からない事があると、世の中にある情報を鵜呑みにします。特に医療や健康のことは本当のところは誰も分からないことばかりなので、記事に書かれたり、世間で言われていたりする情報を否定できず、そのまま受け入れてしまうことが多いです。ただ、世の中の市場経済は人の健康が一番ということで成り立っているわけでは無いので、きちんと自分でその情報の正しさを判断する必要があります。

干物のデータの考察に戻りますが、相関性があるのは分かったところで、このような場合は ①直接的に病気の原因として関与しているのか?と ②間接的に関与(環境など)しているのか?を考えます。

もし干物が直接的に病気に関与している場合、ほとんどの人は塩分を取りすぎだからと考えるように思いますが、先のデータのように塩分は直接的にほとんど関係ないことが分かりました。ただ、干物は塩を付けた後に天日干しなどをして「反応」をさせます。直接的に関与しているなら塩を付けてから「干す」という作業が何か関与しているかもしれません。また、その後、食べるときには焼いて焦がすこともあります。食品の焦げは発がん性があると昔からよく聞きます。しかしながら、米やパンなどを焦がした場合、ほとんどでんぷんで出来ているため、焦がしたところで「炭」になるだけです。干物の場合はたんぱく質に塩を付けて反応させており、塩自身、もしくは塩に含まれる微量な物質がたんぱく質のアミノ酸と反応し、炭とは別の副産物が出来てしまっていてもおかしくはありません。

また、間接的に関与している場合、干物は寒冷地の保存食としてよく食べられる物ですので、寒冷な気候と上の病気に因果関係があるかもしれないということは想像できます。

このような考察が確かなものなのかを確認する方法も、つぶさに統計データを見ていくしかありません。これが確かな答えへの筋道となります。

図7 脳梗塞_キャンディー/炭酸飲料 寿命_歩数

脳梗塞とキャンディーについては若干、逆の相関性が見られます。直接的な関与として考えた場合は、脳に対してキャンディーの糖分が良い効果があるとすることができます。間接的な関与としては、甘いものを食べない人はお酒を飲む人が多いので、それが原因で脳梗塞になり易くなっていることが考えられます。

歩く歩数と寿命はかなり相関性があります。通勤や買い物の関係でしょうか、都会の人のほうが歩数が多いことが分かります。また、改めて寿命のデータを考察しますと日本の中心部のほうが寿命が長く、北海道・東北など日本北部や九州地方など日本南部のほうが短命なことが読み取れます。

また、特に大阪府は歩数が全国1位でありながら、寿命が短命になっていることに留意する必要があります。このような場合に大阪府の生活習慣を細かく調べることで短命にしている原因が明確になる可能性があります。

図8 塩分_野菜摂取量/生鮮肉摂取量

塩分と野菜の摂取量には相関性があります。要するに野菜は塩分が無いと味気が無くて摂取できないということだと考えられます。反対に生鮮肉は逆の相関性があります。恐らく肉を食べる人は野菜をあまり食べないため、相対的に塩分の摂取量も低くなります。

改めて振り返りますと、塩分・野菜摂取量・生鮮肉摂取量・その他多くの食物との間において、都道府県別の寿命の違いとは相関性がなく、干物や酒類などに相関性があることが分かりました。ただ、様々な病気の発症との関係はこのデータだけだとまだまだ不足しているため、それらを見出すのがこれからの課題と言えそうです。特に、昔から存在する一般的な食材は統計データがありますが、最近増えている合成甘味料や薬剤の摂取量などのデータは存在しません。これらのデータをきちんと取り、病気の発症と比較検討をする必要があるように思います。

基本的な考えとして、人類が昔から口にしているものは恐らく大きな健康上の問題はなく、現代になり新しく出てきたものを、美味しいからと言って過剰に摂取することには気をつけたほうがよさそうです。上の統計データを見直しますと、長寿命の都道府県はすべてにおいてほぼ平均値のところを推移していることから、摂取のバランスが良いことが見て取れます。

話はだいぶ横道にそれましたので元に戻りますが、糖の過剰な摂取の行き着く先を考えてみます。

このまま糖を過剰に摂取すると、脳が更に発達し大きくなり、より酸素を必要とするため、肺も発達し大きくなります。

生物は生態系の頂点に立つと必ず、その最大の特徴があだとなり、いつかは絶滅します。頂点に立たなければ、ひっそり末永く自然の調和とともに繁栄していきます。人間社会でも同様のことは見受けられます。

人間の場合、最大の特徴は脳が発達していることであり、常に過剰なほどの酸素と糖を必要としています。無酸素の部屋で呼吸をしようとすると一瞬で即死することは、半導体製造設備に関わる人や地下工事に関わる人などは、普段から教育を受けて知っていますが、一般の人はなかなか理解できません。息を止めても死なないのは肺に溜まっている酸素を少しずつ消費しているからであり、無酸素の状態で呼吸をすると、肺で急激に酸素と二酸化炭素のガス放出が起こり即死します。実際は無酸素どころではなく、酸素濃度が16%以下になると同様のこと(呼吸をしただけで死に至る)が起こります。17%以下でも生命維持が危うくなりますが、これは通常の大気における酸素濃度から2割弱程度の酸素濃度が減少した状態です。

現代の空気中の酸素濃度は20.9パーセントであり、数千万年ペースでずっと増加してきましたが現在は頭打ちの状態です。これとは反対に二酸化炭素濃度は、数億年かけてずっと減少し続けて0.028%ほどまで低下しましたが、この100年ほどで上昇に転じ、それでも濃度はわずか0.034パーセントです。

温暖化は二酸化炭素の温室効果が要因と言われておりますが、どうもそうでは無い可能性もあります。古代からの二酸化炭素濃度を地質学的な知見や海中の有孔虫の大きさなどで判断すると、以前は少なくとも5パーセント以上の時代もありその時には既に豊富な種類の動植物が暮らしていました。もし今言われているように、0.006%の濃度変化で地球の平均気温が1℃上がるとしたら、その800倍以上の濃度上昇が起こったら何度になるのでしょうか?

現在の地球温暖化において主な要因の一つは、「熱の放出」であることは確実です。発電所や工場で出た熱を冷却水で冷やし、その温まった水を川に流し、海に放出することが要因です。二酸化炭素を排出しない原子力発電所も例外ではありません。水は地球上の物質の中で比熱が最も高く、冷却効果も高いのですが、自分自身が持っている熱を放出するのも時間がかかるため、発電所や工場で暖められた冷却水はそのまま海に流れて海水温を上昇させます。

海水温の上昇は、海水中の酸素濃度を下げ(図)海洋のプランクトンの生育に大きな影響を与えます。アサリやハマグリの砂を吐かせるときに水が温かくなると元気が無くなるため冷やさなければならないのですが、その理由は、ぬるくてだれているのではなくて酸欠になるからです。

上述したように、地球上の二酸化炭素の量が大きく減ることで、光合成を行う植物やプランクトンが自分で生産した酸素をそのまま自分の中だけで消費するようになり、地球上の酸素濃度が低くなります。

一説では、酸素の生産は陸上の植物が30%、海洋の植物プランクトン(ケイソウなど)が70%と言われています。陸上の熱で植物が枯れて砂漠化し、海水温の温度上昇で植物プランクトンが死滅し海も陸も酸素欠乏の状態に陥ってしまうことは、今の社会構造を見ていると近い将来起こってもおかしくはありません。その時に一番最初に絶滅するのは人間を始めとして脳が発達している動物【哺乳類】です。

とはいえ、地球から見るとこのような変化は今まで起こった地球規模のイベントに比べれば全く大したことはありません。そして、この二酸化炭素欠乏から抜け出す方法が唯一、隕石の衝突で起こる大規模な火山活動でしかないことも地球の長い歴史から汲み取れることを考えると、生物にとっては何とも皮肉としか言いようがありません。

*1:アンドリュー・パーカー(英)「眼の誕生―カンブリア紀大進化の謎を解く」渡辺政隆・今西康子(翻訳)

*2:国立遺伝学研究所「遺伝学電子博物館」ゲノムインプリンティング~父親母親由来ゲノムの役割分担より

https://www.nig.ac.jp/museum/genetic/04_b.html

〔佐々木裕之「現代医学の基礎第5巻,生殖と発生」(岩波書店)第9章より引用