次世代エネルギーデバイス

 

【地球温暖化の解決方法】~地上での総エネルギー量コントロールと次世代エネルギーデバイス~

   (ニューパラダイムシフト 第2章)

はじめに

 私が、地球温暖化の原因が二酸化炭素であることに疑いを持つようになったのは、10年ほど前の2013年頃からで、その後、分野違いのW氏と話をしていく中で頭の中で整理され、それは明確になっていきました。

2023年の夏は、それまで経験した暑さを一線超えるものとなり、夜も気温が下がらず休み無くという日々が続き、流石にこれはいけないと皆が思い始めたのか、自然エネルギーを利用した発電方法や高効率電池の新しい技術など様々な機関や企業が開発しているものの報道が頻繁になされるようになりました。

しかしながら、その内容によっては温暖化を解決するどころか、逆に温暖化を加速するものも見受けられます。原子力発電はそれの最たるものです。それらは根本的に「二酸化炭素が温暖化の原因である」ということを基本原則として進めているものになりますが、現在のように切羽詰まった状態で誤った方向に進んでは致命的になりかねません。

私は運よくも幅広い科学技術に触れられるところで長年従事し、様々なデータや単語を理解することができ、大学教授や政治家のように地位があるわけでもなく自由人な立場のため、忌憚の無い意見を語ることができます。

また、私が特に強く思うことは、自分の子供たちや若い世代に大きな問題を背負わせたままにしてはいけないという事が一番にあり、加えて世界で生じる紛争を無くしたいという事があります。紛争の根幹には、石油をはじめとしたエネルギーの獲得競争、価格操作、環境問題などが潜んでおり、地下資源依存から脱却し自然循環エネルギーへ移行することによって、誰でもどこででも最低限のエネルギーを手に入れられるようなり、それによって争いから解放される世界を造ることを目指していきます。

このあと記述する私の考えやその他の意見も含めて、事実が何かを追及することの大切さを世界の若い人たちに紡いでいきたいと切に願っております。

 

 

 

 

 

 

1.太陽光量と水

2022.11.26~

地球上において地表付近の温度を決めているのは、太陽光量と水です。

1日のうちに朝・昼・夕・夜と日照(太陽光)の角度が変わるだけで数度ずつ温度に変化が生じます。日本であればどの季節でも昼から夜にかけて10℃近く気温が下がります。また、日本の真夏と真冬では最高気温の差は25℃にもなります。それだけ太陽光の影響は大きいことが分かります。先に言いますが、地球にとって太陽光がいつでも最も偉大な力です。

それでは、太陽から届いているのは熱なのでしょうか?これはいくつかの例を挙げれば違うということが分かります。

熱が直接(対流や伝導により)伝わっているのであれば、太陽に近づけば近づくほど熱くなるはずですが、太陽と地球の間はほぼ真空状態で熱を伝えるものが無く、近づけば必ず熱くなるという事ではないことは上空の気温が低いことから分かります。

太陽からもたらされている熱源となるものは電磁波です。このうち主には赤外線(近赤外線~遠赤外線)がそれにあたります(図1)

図1:地球を暖めているのは電磁波

 

太陽光(電磁波)が地表に降り注ぐことで、あらゆる物質はそのエネルギーを受けて振動し、自分自身がそのエネルギーを吸収しながら熱を発します。このとき、各物質により熱を保ったり、すぐに放出したりする能力が異なりますが、この能力を「比熱」と言います。

夏場に直射日光が当たったアスファルトや金属製の滑り台などは触れないくらい熱くなりますが、植物の葉っぱはそこまで熱くなりません。海辺の砂浜をはだしで歩いた時に、乾いた砂は歩けないほど熱くなりますが、磯に溜まった潮だまりは足を入れられないほど熱くなることはあまりありません(図2)

図2:物質により暖まり方が異なる

 

植物や動物などの生物に直射日光が当たっても熱くなりすぎないのは、内部に水を保っているからです。水は比熱がほかの物質に比べてはるかに高く、「温まりにくく、冷めにくい」性質を持ちます。

地球に降り注ぐ太陽光の量は多少の周期はありますが、原始より安定に保たれており、地表では熱エネルギーの吸収と放出を昼も夜も毎日、何十億年も繰り返しながらバランスを保ってきました。

繰り返しますが、このように太陽光が物質に当たると熱を持ち、それを大気に放出します。

放出された熱が、そのまま大気から宇宙に向けて拡散・放熱されるかどうかは、大気の状態によって変わります。

夏場の強くて長い日照条件では、海の水も温められ水が蒸発し水蒸気になります。

水蒸気が大気中に増えていくといくらかの日光を吸収し、更に熱を持ち上昇していきます。そのまま上空までいくと冷やされて雲になります。このようにして雲が出来上がると日光を遮り、地表や海面の温度上昇を妨げます。地球は太古の昔から素晴らしいバランスでその温度を安定に保っています(図3)

図3:昼間は日光を遮る(地表の昇温防止)

 

冬場の弱くて短い日照条件では、水が蒸発することが少なくなり乾燥します。大気が乾燥するとどうなるのでしょうか?

冬場の気象予報では「放射冷却」という言葉をよく耳にします。これは乾燥した冬の夜に起こる現象で、日照の無い乾燥した条件では地表の放熱が激しいということです。逆に冬の夜に雲が出ていると、明け方はそこまで寒くなりません。この時の気温差は5~10℃も違います(図4-1、図4-2)

図4-1,図4-2:放射冷却と雲や水蒸気の関係

皆さんも聞いたことがあるかと思いますが、砂漠地帯では昼と夜の温度差は40℃近くなることもあります。

このように大気中の湿度(水蒸気濃度)が高い場合や、雲が出ているときは放熱が起こらず、乾燥していると放熱が激しく起こります。昼間に雲が出て夜に晴れて乾燥する日が何日か続くだけで、急激に気温が下がります。この時、二酸化炭素の濃度はほとんど変化が無く、また、ほとんど気温に影響を与えていないように思えます。よく地球温暖化の原因として二酸化炭素の温室効果が取り沙汰されますが、温室効果だけで考えれば水蒸気のほうが大気中の濃度も高く、その比熱による保温効果(温室効果)も高いことは実感として皆さんもあるのではないでしょうか?

これを具体的な数値と計測結果で見ていくことが事実に近づくために必要なことであり、ひいては現在の地球温暖化にブレーキをかけ、逆に地球を冷ますための方法を実現するために必要であるため、これを可能な限り示すことにいたします。

まず、大気の重さは1リットルあたり1.2g(気温20℃)=1立法メートルあたり1200gと一般的に言われており、成分割合は重量比(体積比ではない)で窒素ガス(N2)75.5%、酸素ガス(O2)23.1%、その他1.4%となっています。大気中の飽和水蒸気量(湿度100%の時で、これ以上蒸発しようとしても結露してしまう状態のこと)は17.2g/1m3(気温20℃)ですので、湿度50%ではその半分の8.6gの水蒸気が存在していることになります(図5)

図5:大気中の各気体存在割合

 

重さ1200gの大気に対して、8.6gの水蒸気濃度は割合として0.716%になり、これも一般的によく報告されている二酸化炭素(CO2)の大気中存在比0.045%と比べると17倍の濃度になります。また、比熱の比較でも水蒸気は二酸化炭素に比べて2倍以上となるため、地表の保温効果としての影響はこれだけを見ても水蒸気のほうがはるかに大きそうだということがイメージできます(図6)

図6:大気中の水蒸気濃度と二酸化炭素濃度の比較および比熱の比較

 

また、これに加えそれぞれの気体が電磁波のエネルギーをどれだけ吸収するかを調べる必要があります。下記、京都大学の研究室のサイトから引用いたしますが、大気の透過率はこれ以外の様々なサイトにあるデータにおいてほぼ共通しています。これらを見ると、X線や紫外線の多くは大気上層でほとんど吸収され地表には届いておらず、紫外線の高波長側~可視光線~赤外線、また波長が1mmを超える電波域が地表に届いていることが見て取れます(図7)

図7:大気の透過率(*京都大学理学部宇宙物理学教室よりhttp://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~iwamuro/LECTURE/OBS/atmos.html

 

加えて、0.8μm(800nm)以上の近赤外線から赤外線領域において、さらに細かく大気の透過率を見ていくと、いくつか透過率が低い谷間(下へのピーク:白い谷間の部分)があることが分かります。上記と同じ研究室のサイトにある説明では「大気モデルで計算した」とあります(図8)

図8:大気モデル(計算による:京都大学理学部宇宙物理学教室より)

 

合わせて東京大学の研究室のサイトから引用するデータでもおおむね同様のグラフになっていることが見てとれます(図9)

図9:大気モデル(計算による:東京大学アタカマ天文台計画より)

これらのデータから、全般的にH2O(水蒸気)のほうがCO2より吸収が大きいことが分かります。ひとつ気にかけなければいけないのは、15μm付近でH2O(水蒸気)よりCO2のほうが吸収は強く、この影響がどの程度あるかということになります。このデータからCO2も多少なりとも保温効果に関係しているということが分かります。

国立環境研究所のサイトには温室効果に対する二酸化炭素の寄与が21%とあります。これは、赤外線の吸収データのみで算出したデータのように見受けられ、先に挙げた水蒸気濃度と比熱の件には触れられていないように見えますが、21%と言っている根拠を追及していくことが重要です。

https://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/11/11-2/qa_11-2-j.html

https://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/4/4-1/qa_4-1-j.html

私が記載している本稿の内容も上記研究機関が記載している内容も、どちらかが「間違っている!」など責めるのではなく、事実に向かってどの視点が不足していたかなどを明らかにしていくことが次の理論につながります。責めているだけでは発展はしません。

 

2.金星の大気

二酸化炭素は温室効果があるということの最大の証明として、「金星の大気」が必ず例として挙げられます。金星の大気は大部分が二酸化炭素(96.5%:容積割合)で残りの3.5%のうち、ほとんどを窒素が占め、それ以外に微量の二酸化硫黄と水蒸気などが存在すると一般的に言われているようです。地表温度は460~500℃とも言われ、このような高温の原因として大気に高濃度に存在する二酸化炭素が原因とされています。金星の大気上空は厚い雲に覆われており、地表に直射日光が差すことはあまりありません(22%程度)。そのため、雲自身が太陽光により暖まっている可能性が高いですが、この雲の成分が「濃硫酸(または硫酸)」であると言われている場合が多く見られます。しかしながら、硫酸はかなりの高温まで液体として存在し、ガスになると水素や酸素と反応をして硫化水素や二酸化硫黄となります。また、この雲の層が存在する高度の気温は0℃~100℃であると言われていますので、これは硫酸が液体になってしまう温度です。また、二酸化硫黄が存在するならば二酸化炭素より重いため下層へ移動するはずです。ですので、現在考えられている金星の大気は矛盾が多くあります(図10)

図10:金星の大気

金星は前述のとおり、探査機にとっても過酷な条件であるが故に、ロシアや米国であっても金星への着陸成功例は非常に少ないです。金星の大気観測は1969年にロシア(旧ソビエト連邦)のべネラ4号が成功し、その後1985年までに6回地表着陸に成功し撮影は行われていますが大気の回収計測例はありません。また米国はマリナー計画やパイオニア・ヴィーナス計画などで1960年代~1970年代にかけて何度かトライはしていますが、着陸成功に至っていません。それ以外に金星の大気計測として遠方より赤外吸収を調べるなどの方法もありますが、これも精度としては十分ではありません。このため、大気成分の正確な計測はいまだ不完全の状態です。

金星の高温は水素の存在有無を調べることで発展があると推測します。元々、水素自身、あるいは水素を持つ物質は比熱が高いのですが、例えば硫化水素は、化学物質の中では最大の約34,000J/kg℃の比熱を有します。これは水蒸気の17倍、二酸化炭素の34倍もの比熱となります。この物質に太陽光が当たり熱を持つとほとんど冷めなくなることでしょう。ただ、もしかすると宇宙に拡散してしまい既に存在しないのかもしれません。

現時点での情報から金星大気は酸化状態であることを示唆していますが、JAXAやNASAなど宇宙科学の専門家に化学的な知識を得意とする人も含めて、金星の温暖化のメカニズムを尚早に確認してもらうようにお願いをしたいです。

 

 

 

3.地下資源の熱放出

それでは、地球温暖化はなぜ起きているのか?という問いの答えですが、ひとえに 「地下に埋没している資源を地表に掘り出して熱を放出しているから」 ということになります。地下に存在する資源はエネルギーとして濃縮されています。それらは地下に存在する限り、地上での気温には関係しませんでしたが、石油や石炭、天然ガスのように掘り出して燃焼したり、ウラン鉱石のように掘り出して核分裂させることで、大きな熱エネルギーを発生し、地上を熱くしてきました(図11)

図11:地球温暖化のメカニズム 地下資源の地表での熱放出

 

そもそもエネルギーは保存法則(エネルギー保存の法則)があり、それは理論的にも経験的にも実感できます。水が太陽光の電磁波により分子運動が行われ発熱し、高い運動エネルギーに置き換わり(熱力学第一法則)、大気中を上昇し雲となり高い位置エネルギーに変わります。それが雨となり川を下ることで運動エネルギーに変わります。いずれにしても、普段は偉大な太陽光のエネルギーを起点にこのようなエネルギー循環が起きており、地球に降り注ぐ太陽光の光量が変わらなければ、これらのエネルギーも一定に保たれます。また、保たれてきたからこそ生物の生存が成り立ちます。

現在、温暖化をしているということは、このエネルギーバランスが崩れているということです。エネルギーの総量が増えているという事になりますが、増えているのは我々が生活している地上でのことであって、地下ではありません。

太古の昔から、地上にある樹木は乾燥と強風による摩擦から山火事が起きたり、雷で焼失したり、人間によって燃焼されてきたりしました。そのような形で熱エネルギーに一旦変化することはありました。それでも、それらは「地上」に存在するエネルギー循環の中で行われていることで、長い年月をかけ樹木が修復されれば、それらの熱エネルギーは樹木という形で濃縮され保存されてきました。

その後、産業革命により、「地下深く」から石炭が掘られ蒸気機関車の動力として使用されたり、あるいは工場などで鋳物を製造する際に大量に消費され始めました。20世紀に入り自動車が走りはじめると燃料としての石油の需要が大きく増加し、また、電気が各家庭に普及することで発電などでも使用されるようになり、1950年以降は原子力発電も開発され、掘り出されたウランなども使用されるようになりました。

産業革命以降、人々はこのように地下資源を大いに活用し、産業を発展させてきました。産業発展により人々の生活は大きく変わり、鉄道や自動車で長距離を移動し、たくさんの食料を生産し、家電に囲まれた便利な暮らしを手に入れてきました。電気が身近なものとなり、パソコンとインターネットが生まれ、携帯電話も多くの人が持つようになりました。これらのことが必要なかったかというと、私はそうとは思いません。今後迎えるであろう難局に相対するために必要な道程であったのだろうと今は感じています。

「カーボンゼロ」や「脱炭素」 という言葉には非常に違和感を生じます。ヒトを構成する原子の2割近くはカーボンです。要は化石燃料から脱するということを言っているのでしょうが、だからと言って現在の日本や各国の政策は危険です。詳細は最後に記述しますが、二酸化炭素はその存在自身、生物が生きていくうえで非常に重要なものなのです。

 

4.海と川と大気への熱放出

工場で製造されるあらゆる品物は、必ずと言ってよいほど成形や反応などのために加熱と冷却を行います。このときに使用する冷却水は、製造品から熱を奪い、それ自身が熱を保持しながら川に流れ海に到達し海洋表面温度を高くします。

発電所でも同様に、火力発電と原子力発電は、発熱することにより水を蒸発させ、その蒸気でタービンを回し電力を作り出します。この時に熱せられた水は水蒸気として大気に放出されるか天井で冷やされ温水として回収し、やはり海に流されます。このような過程を行いやすくするため、発電所は海岸近くに設置されます(図12)

図12:海と川と大気への熱放出

このように水が利用される理由は、身近に大量に存在しながらも、比熱が高く、それゆえ冷却効果が高いからです。20℃の気温のときに裸で立っている場合と、20℃の水に裸で入った場合で、どちらが体温を奪われるかは明白です。水は温まりにくく、たくさんの熱を奪うことが可能で、かつ一度熱を持つとなかなか放熱しません。

現在の原子力発電について、しばしば二酸化炭素を排出しないため環境に優しいという謳い文句を聞くことがありますが、ウラン鉱石という地下資源を使用していることに変わりはなく、大量の温水を排出していることを鑑みると同意できません。

原子力発電はそれ以外にも、設備の構築、運営、廃棄において非常に環境負荷が高く、また事故のリスクや事故後の補償なども考えると、今後は進めるべきではない発電方法であると言えます。

特に近年、小型原子炉の開発と事業化が進められています。これは事故の規模を小さく済ませられるといったこと以外のメリットはありません。

直近の世界における原子力発電の発電量では、アメリカ、中国、フランス、ロシア、韓国の順に多く、建設中で今後に稼働予定の原子力発電の発電量を見ると中国、韓国、インド、UAE、ロシアなどアジア地域で大きく増加を見込んでいます(図13)

図13: 2020年における世界の原子力発電の発電量と建設中で今後稼働予定の原子力発電の発電量

 

恐らく、このアジア地域における原子力発電の増加は、地球温暖化防止や化石燃料依存からのコスト削減を見込んでの事だと考えられます。しかしながら、先に挙げたように原子力発電は地球温暖化に最も影響を与えているものと考えられるため、事実を理解し早めにブレーキをかける必要があります。明確なデータがあるわけではないので何とも言えませんが、しいて言えば、二酸化炭素が出るほうが植物の成長促進につながるので原子力発電よりもまだましかもしれません。

ただ、発想としては中国も韓国もインドも正しい方向に向かいたいということの表れなのだと理解します。世界的に、米国と日本以外の国は既に経済発展よりも重要なその先を見越して動いているかのように見えます。それにも関わらず、身近な日本国民を見るとほとんどは相変わらず経済発展をすることが最も良いこととして捉えているふしがあり、この考えが改まることは非常に困難です。例えばこれ以上環境破壊が進まないよう、自国でエネルギー消費を控えている国があったとします。それにもかかわらず、隣国で莫大なエネルギーを消費して大儲けをしていたらどう思うでしょうか?この国が他国から攻撃されたところで、味方になる国は現れるのでしょうか?仮に現れて、これら膨大なエネルギー消費を行う国々が争いに勝ったとして、本当にそれで良いのでしょうか?

話は変わりますが、エネルギー消費の増加が著しいものとしては「自動車」が挙げられます。自動車の世界販売台数は年間8000万台以上となっており、年5%ずつ増加しています。これらの動力は、エンジンを有する燃料車は当然のことながら、電気自動車であっても発電所では化石燃料や天然ガス、ウランを使用することが多いため結局のところ地下資源を利用しています。地球温暖化の大きな要因の一つです。また、そうであるがゆえに、改善の余地も大いにあるところです。

自動車を運転するうえで、夏場のエアコン(冷房)や冬場のヒーター(暖房)の使用は今や欠かせないものとなっています。

1980年代まではエアコンが付いていない車がほとんどだった事実を知る人も少ない事でしょう。自動車の種類にもよりますが、燃料車が夏場に冷房を使用すると燃費は10~20%下がります。この理由は、エアコンは電気で動くため発電をする必要があるのですが、この電力をオルタネーターで発電して得る際に、エンジンの出力をこれに取られてしまうからです。夏の夜に高速道路のサービスエリアやパーキングに行くと、ほとんどのトラックや乗用車がエンジンをかけて(アイドリング)駐車していて、その熱気は様々な弊害をもたらすものとなっています。これは特に運送会社の人々が睡眠や荷物の管理のために行っていますが、エアコン用の蓄電池が別途用意されれば、エンジンをかけたままにすることはせずとも賄える可能性があります。エアコンは燃料ではなく電気が得意とするところです。また、車内への送風も前面から行われる自動車がほとんどのため、前面に配置しているエンジンの熱をある程度拾ってしまうということが起こります。ファンを回すだけであれば電力量は非常に小さくて済むため、自動車の強度を考慮しながら、側面にファンを配置するなどの工夫も今後は必要です。

冬場に燃料車でヒーターを使用しても燃費は下がります。走行中は動かしているエンジンの熱を社内にファンで強制的に取り込めばそれだけで良いのですが、停止中でも暖房のためにエンジンをかける必要があり、その時間が長いほど燃費が下がります。燃料車において暖房のためにアイドリングすることで同様に燃費は大きく下がります。しかしながら、燃料はその名のとおり燃やして熱を得ることができるため、暖房においてエアコンよりもシンプルです。キャンピングカーなどでは、エンジンをかけなくても燃料を直接燃やして暖房にする「石油ヒーター」を搭載しているものも増えてきました。真冬に一晩エンジンをかけっぱなしで暖房を使用すると、乗用車で5~10Lは燃料を使用しますが、乗用車より広い車内のキャンピングカーで石油ヒーターを使用しても1Lほどしか使用しないため、節約になっています。

このような根本的な要素部分で課題がありながら、自動車開発は先進的な方向にばかり進んでいるように見えます。サイドミラーを液晶モニターにするなど、そのようなことよりも前にもっとやるべきことはあります。本当は最低限安全面の機能以外をそぎ落とし軽量化することが、最も燃費に影響を与えます。

最近になり、電気自動車も増えてきましたが、日本での冬場の環境に、電気自動車は燃料車に比べて適していません。電池は寒くなるとその効率が極端に落ちます。また、暖房の効率も低いです。電気自動車は暑すぎるところでもトラブルが生じます。ですが、電気自動車に搭載してある畜電池は自動車の制御やエアコン、その他電気製品を使用するための電力供給には優れています。

ハイブリッド車のように燃料と電池を両方搭載しているという点はそれぞれの長所と短所を補うことが出来ます。長い目で見れば、自動車はハイブリッドが主流になるべきです。ただし、そのためにも燃料は地下資源ではなく、自然エネルギーを利用してバイオテクノロジーや化学合成で作り出したものでなければなりません。また、ハイブリッドも燃料と電気の2種類のみではなく、今後はそれ以外のエネルギーも3種類以上搭載し取り込んでいくべきだと思います。将来は少量の燃料と身近にある廃材や炭だけで走る車も出来ておかしくはありません。

 

 

 

5.燃焼の結果として増加する二酸化炭素量

それではなぜ、世の中では二酸化炭素が温暖化の原因と言われているのでしょうか?明確な始まりは分かりませんが、1985年にオーストリアで行われた地球温暖化に関する世界会議(フィラハ会議)では、既に二酸化炭素が原因と言われていたようです。その後は、原子力発電の推進者や電力推進者(化石燃料を直接使用しない)の人たちが、このことを謳い事業活動を行っていました。

科学研究の世界では、生命や宇宙、環境など複雑なものであればあるほど、計測技術がいまだ未熟であるために全体を捉えられず、分かりやすい一つの「結果」を「原因」と読み違えてしまうことが良く見受けられます。この結果と原因も複雑に絡み合うものであるが故に、本当の主原因が何なのかを見出すことが難しいという事があります。これについては改めて別の題目で説明をする予定です。

今回の二酸化炭素と温暖化の関係を端的に言うと、温暖化の主原因は「地下資源の地表での熱放出」であり、地下資源のうちのウランを除く化石燃料を燃焼した「副結果」が二酸化炭素の増加であり、かつ二酸化炭素は窒素や酸素よりも比熱が高く、赤外線を吸収するがゆえに微弱ながら温暖化に寄与している、ということになります。主原因である「地下資源の地表での熱放出」の主結果は「地球温暖化」ということになります。

それでは地球気温の変動とCO2の濃度についてグラフを比較して見てみましょう(図14)

図14:地球温暖化の「原因」はCO2ではない? 地球気温の変動とCO2増加のグラフ

 

見て分かるように、世界の年平均気温は突発的な下降(1910年頃と1970年頃)もありながら、基本的には右肩上がりに上がっています。また、二酸化炭素の濃度は年内の変動(北半球において夏に濃度が下がる)はありながらも、きれいに右肩上がりに上がっています。このように2つのグラフには相関性があると言って良いのですが、だからといって「原因である」ということにしてはいけませんという事を皆さんに伝えたいです。前述のとおり、ひとつの結果である可能性が否定できないからです。

加えて実際に二酸化炭素の温室効果を確認する実験は色々探しましたが私は見つけられておりません。ということで、自分自身で近いうちにこれを実証したいと考えています。

 

6.「地球冷却化」に向けて ~地上での総エネルギー量コントロール~

【光合成】は今後のエネルギー対策を考えると、最も重要な自然現象です。<太陽光・二酸化炭素・水>から<糖(エネルギー源)・酸素>を作り出します。糖が出来てしまえば、化学工業的にもバイオテクノロジーでも、アルコール燃料、オイル燃料、酒類、食品類など様々なエネルギー物質が作り出せます。ただ、光合成のメカニズムは複雑であるがゆえにまだ解明されていない部分が多くあり、人工的に再現することは出来ておりません。これを一から人工的に準備する必要はなく、既に自然界に存在する植物や微生物の力を借りるのが賢明です。

原始の最初の生物となる微生物がどのような過程を経て世に現れたかは分かりませんが、ストロマトライトを形成する「シアノバクテリア」はそのうちの候補の一つに挙げられます。元々、このような藻類が光合成を行い始めたことにより、大気中の二酸化炭素が減り、酸素が増え、地表に有機物が大量に作られていくことになりました。それまで無機物だらけだった地球上において、二酸化炭素を材料として有機物がどんどん作り出されることで、新しい生物が作り出され、現在の生物多様性が生まれました。有機物は主に、「酸素」「炭素」「窒素」「水素」の4元素から出来ており、我々人間もこれらで構成されています。最近「カーボンゼロ」「脱炭素」という言葉が使われておりますが、自分を構成するうちの18%が炭素で構成されているということを理解していないように感じます。我々自身が有機物であり、これら4元素で構成されているということを、もっとみんなが強く認識する必要があります。

生物の中でも「木」は非常に大きな存在です。直接太陽光を葉に受けて光合成を行い、出来た糖分から自分自身の構成成分を作り出し成長し、また果実や種子などで他の生物に対して栄養源を分け与えます。そこに木が存在するだけで、太陽光の熱エネルギーがそのまま熱にならずに濃縮されるということが分かります。幹と枝葉には大量の水を保持するため、その比熱により太陽光の熱エネルギーを吸収し、光合成により葉で作られた当分はセルロースとして自身を構成しエネルギーが濃縮された形となります。動物に対しては重要な日陰を作ってくれる存在であり、加えて食料も分けてくれます。

また、人にとっては身近に感じませんが、海洋や湖にいる「藻類」も大きな存在と言えます。地球上で行われている光合成の7割を藻類、特にケイソウが行っているという説もあります。よく耳にする「ユーグレナ」などは、光合成で作り出した糖類から更に炭化水素「オイル」を作り出します。炭化水素は最もエネルギーが濃縮された形の一つで、1リットルで2トンもある自動車が十数キロ走ることを考えれば、その効率の良さを理解することができます。

我々が普段利用している「石炭」や「石油」も、元々は古代に存在した木や炭化水素で成り立ちます。石炭は石炭紀に地球上を埋め尽くしていた巨大植物の群集が天変地異などで急激に地面に埋没したか、もしくは生物に分解されづらい水中などで沈殿し泥炭になった名残と考えられますし、石油は藻類が作り出した炭化水素の「プール」や藻類自身が、石炭と同様の理由で地面に埋没した形と考えられます。

このようなエネルギーの濃縮体を地下深くから掘り出し、地表で燃やすことで熱を放出しているため「地表や海が熱くなっている」と考えられ、これと逆の方法を行えば地表の熱を下げられるということになります。端的に言えば、「地表でオイルを生産し、それを地下に埋める」ということです。特に液体やガスであれば流動性があり変形し、地下深くに行けば行くほどその圧力で体積も減るためそれに適します。当然、この埋没を行う際に使用するエネルギーも全て自然エネルギーの力により行わなければなりません(図15)

図15:地球温暖化の解決方法

これが地表での総エネルギーコントロールの一つの方法です。

産業革命以降、石炭、石油、天然ガス、ウランなど地下資源を掘り起こし地表に放出した分を、地表で新たに生産し埋没させ、以前と同様の気候に戻すことを考えると、それはどれだけ膨大な仕事になるか想像もつきません。また、このような仕事に顧客が生じ、売上が生じるとは考えられません。現在の資本主義社会でこのような重要な仕事を誰がやるというのでしょう?ですので、このようなことは、お金儲けから切り離して国家レベル、あるいはそれを超えて世界レベルで手をつなぎ行わなければならないことなのです。

繰り返しますが、現在の地球温暖化は、「地下に存在するエネルギー資源を地上で熱として放出することで地上の熱エネルギーの総量が増えている」ことが主原因と考えられます。二酸化炭素は地下資源を燃焼した際の「結果」の一つであり、ほとんど原因には寄与していないように見えます。ですので、温暖化を止めるには、地下資源(石油、石炭、天然ガス、ウラン)の地上での熱放出を減らしていき、自然循環エネルギーに置き換えていかなければいけません。

これに加えて、温暖化を止めるだけではなく、「冷却化」に向けての活動も始めなければいけません。これを行うには、現在熱として存在しているエネルギーを別の形に置き換えて保存することで実現化することが出来ます。

最も分かりやすい例としては、例えば、太陽光のエネルギーがアスファルトに当たり熱になるところを、微細藻類を育て光合成に置き換えることで「発熱」が「オイルの蓄積」になります。ここで出来たオイルを地下深くに埋めることで、今まで石油を掘り出して地上で熱放出したことと逆のことを行います。このとき、地下深くに埋める運動エネルギーも自然循環のエネルギーを用います。このようにすることで地上のエネルギーの総量を減らしていくことが可能となります。

もっとシンプルなのは、世界中で樹木を増やすことです。これにより熱エネルギーが物質に変換されます。このようなオイルや樹木は言わば、「エネルギーの濃縮体」です。また、日影が多く生まれるため動物の活動にも支障が出なくなり生存しやすくなります。

どこの国の都市でも、河川や植物が減り、コンクリートやアスファルトが増えることで太陽光による温度上昇が顕著です。また、それに輪をかけて、エアコンや自動車など発熱する多くの設備が稼働しています。

日本においては、埼玉や群馬などで最高気温が出ますが、夏場の南風により東京・神奈川・千葉など都心部の熱が北に流れるためです。同じように中部地区では愛知県の熱が岐阜県に、近畿地区では大阪の熱が京都に流れて暑くなります。

また、近年は九州地区での豪雨被害が著しいですが、これは中国の経済発展により東シナ海の海水温の上昇が著しく、その水蒸気や雲が九州地区に流れ続けるために南西の風が吹く梅雨時期から夏にかけて良く起こります。同時期に中国でも豪雨被害が頻繁に起こりますが、これは長江流域の経済発展による河川の温度上昇や、インドや東南アジアの経済発展により、インド東部のベンガル湾の海水温上昇が起こることが原因です。

改めて経験的に考えてみても、電気エネルギー・熱エネルギー・運動エネルギー・位置エネルギー・光エネルギーは可逆的です。電気を流せばモーターは回りますし、モーターを回せば発電をします。インクジェットなどで使用されているピエゾ(圧電素子)は電気を流すことでひずみ(変形)が生じますが、ひずみを押し込むと発電をします。部分的な昇温や冷却で使用されているペルチェも電気を流すことで温度変化が生じ、温度を変化させると発電をします。身近な照明となったLEDも照明部に光を当てれば発電をします。

このように、与えたエネルギーに対してどれだけ電気を効率良く産み出せるかが、重要な要素の一つです。

そういった意味では、太陽光のエネルギーを最も効率良く他のエネルギーに日々変換しているものがあります。

位置エネルギーは地球の重力と関係があるエネルギーの一つです。物体や物質は何らかのエネルギーを用いないと地表から上空や高所に移動することは出来ませんが、それを易々と日々行っている物質が1つだけあります。それが「水」です。太陽光などの熱エネルギーにより、水蒸気→雲という形で高い位置エネルギーを得ます。その後は雨や雪として地表に戻り、川や地下水として流れ、再び海や地下に戻ります。今後更に知恵を絞れば、この「水」の循環を電力などに変える科学技術に進歩があることでしょう。

石炭、石油、天然ガス、ウランなど地下資源を掘り起こし地表に放出した分を、地表で新たに生産し埋没させ、以前と同様の気候に戻すことを考えると、それはどれだけ膨大な仕事になるか想像もつきません。また、このような仕事に顧客が生じ、売上が生じるとは考えられません。現在の資本主義社会でこのような重要な仕事を誰がやるというのでしょうか?

地球の地表の話に戻りますが、地表に届いた太陽光のエネルギーはおおむね、①熱に代わるか、②水が吸収をして雲になるか、③植物や微生物が葉緑体で受けて光合成を行うか、いずれかが行われています。太陽光量は多少の変動はありますが、数十年単位ではそこまで変わらないため一律だとすると、 地表において ②や③を増やすと①は減ることになります。加えて地表に存在する②や③を濃縮した形で地表から別の場所に移すことが出来れば、地表全体の熱エネルギーを減らすことが可能となります。

オイルを埋める方法以外にも、木を深海に沈めたり、自然エネルギーで得た電力を用いてレーザー光を宇宙に照射したりすることで地上を冷却することは出来そうですが、将来資源が不足したときや、逆に氷河期に入ることなどを考えると回収できる状況のほうがコントロールを行うという点で望ましいです。

 

7.太陽黒点活動と地球の気温サイクル

地球温暖化については各国、各分野において様々な意見が存在します。掲げている説の内容を聞くと、それぞれ唱えているその人の得意分野を紐解いて理由を挙げています。これは当然のことと言えます。

比較的賛同者が多い説の中に「太陽黒点運動説」があります。これは太陽の黒点運動のサイクルが地球温暖化に寄与しているという説です。

そもそも地表や海洋は太古の昔から気温変動にさらされてきました。それは一つのサイクルだけではなく、非常に多くの要因が挙げられます。

身近な話から行くと、日本のような緯度の国では1日の間にも気温変動があります。昼と夜では10℃の温度差がありますが、これは地球の自転が要因です。

次に1週間の間でも気圧配置により風向きや天候が変わり、約3℃の温度差があります。これは高気圧と低気圧の配置が要因です。

また、1か月ごとに月が地球に与える引力にも変化が生じます。目に見える変化は海における潮の満ち引きという形で起こります。これにより湿度の変化が起こっている可能性がありますが、いまだ観測データはないため判断は難しいです。

次に3か月ごとに季節が変わり、約6℃の温度差があります。これは偏西風が存在する緯度の変化により、日本を取り巻く高気圧の位置が変わり、春は南西の風、夏は南東の風、秋は北東の風、冬は北西の風と高気圧が1周するからです。主原因は地球の公転により太陽光が当たる角度が変わるからです。角度の変化だけではなく、1日の日照時間も真冬と真夏では7時間も変わります。

次に11年ごとに太陽の黒点運動の変化と言われる変動があります。地球は自転により1周すると1日となりますが、太陽の場合は1回転するのに11年かかります。ですのでサイクルがあってもおかしくはありませんが、太陽の黒点運動による変動がどのくらい影響があるかは分析が非常に困難です。太陽光から放射された光量のうち、地球の熱に関わる電磁波を定性かつ定量的に図ることは不可能に近いからです(常時、どの波長の赤外線がどのくらい、世界の各地に降り注いでいるかを計測することを想像すれば分かります)。ただ、太陽光は最も偉大で、地表と海洋にこのサイクルが何らかの影響を与えていることは確実です。

次に100年ごとでも変動が起こることが分かっています。ただ、これはきちんとしたサイクルではありません。例えば日本では1993年にコメ不足が起こりましたが、これはフィリピンのピナツボ火山の噴火による寒冷化が主原因と言うことが分かっています。このような火山の中規模噴火や、あるいは地球の公転がゆがんで回ることで生じている可能性も否定できません。地球の公転は太陽の周りを1周365日かけて回る運動ですが、土星の輪が少し傾いて見えるのと同じで、少しずつ傾いたり、戻ったりすることが起きていれば、数十年~数百年のサイクルで気温変動が起こると思われます。

次に1000年ごとの変動があります。日本では平安時代の平均身長は現代人とあまり変わらなかったことが分かっていること、逆に江戸時代の人たちは現代人より15cmほど低かったことが分かっています。これは食糧摂取量か酸素量が関係していると考えられ、温暖だと植物も動物も全般的に大きくなり、寒冷だと小型化することが分かっています。江戸時代は歴史の授業で習うように、寛永・享保・天明・天保と大飢饉が訪れます。この17~18世紀にかけての大飢饉は日本のみではなく、世界的に起こっていました。

続いて1万年ごとの変動ですが、これは大規模な火山の噴火によって起こるものです。前述したピナツボ火山や富士山の宝永噴火くらいの規模が世界各地で100個/年ほど起こる規模だと想定しています。

更に続いて10万年ごとの変動ですが、これは長期の割には比較的安定したサイクルで、日本語では「歳差運動」と呼ばれています。これは駒が安定した回転から徐々に不安定になり倒れるか倒れないかという回り方をしますが、地球もこのような回り方をしています。北の地軸は現在こぐま座のα星に向かっていますが、4700年前は、りゅう座のα星だった記録があります。この歳差運動の周期は直近では28500年と言われていますが、氷河期の到来サイクルを見返すと、2.5~12万年くらいの周期変動があることが分かっています。

100万年ごとでは超大規模な破局噴火、1000万年ごとに中型の隕石、1億年ごとに生物の大量絶滅を起こす大型隕石と続きます。

下にある図は樹齢が1800年以上の屋久杉からサンプルを採取し、炭素13Cの安定同位体測定で導き出された気温周期となります。植物などの陸上高等動物は温暖期には13Cの割合が高くなり、寒冷期には逆に減少するデータが存在します。このように同位体測定を行うことで、他の根拠に比べて明確なデータを得ることが出来ます。生物種の保存がいかに大事かという理由が分かる事例の一つです(図16)

図16:鹿児島県における感染症の流行と気候変動の影響について【鹿児島県環境保健センター所報 第16号(2015)】

 

この図を見れば、大きな周期と小さな周期があることが見て取れます。奈良時代や江戸時代は現在+2℃ほど温暖化していることとは逆に、-2℃以下まで寒冷化しているため相当寒かったことが想像できます。

また、北極や南極の万年雪や氷の中に閉じ込められている生物なども、同様の測定や14C放射性同位体測定を行うことで年代測定と合わせてその時の気温推移を推察することが出来ます。

上の図から直近の状況を推察するに、1900年ごろをピークに温暖化が終わり寒冷化に向かっていたことが見て取れます。このようなデータや更に長いサイクルで見た際のデータを元に地球は寒冷化に向かっていると主張する人たちも一定数いますが、確かに今までの地球気温サイクルとしては正しい主張のように思います。先の図14で挙げたように、1970年代、第4次中東戦争が勃発し、世界で禁輸が行われたいわゆる「オイルショック」の頃に世界の平均気温が下がったという事実があり、地下資源の燃焼が少なくなると寒くなる可能性はありますが、しかしながら、そうであっても寒冷化の後には再度温暖化が来るため、後先を見ずに地球上を熱くするわけにはいきませんし、既に人間にとって暮らしづらくなりつつある現在のような温暖化を更に加速することは同意しかねるところです。実際に地球気温をコントロールするかどうかは別として、それを行う方法があるとまずは理解するだけでも大事なことだと思います。

加えて、上述した太陽黒点運動説との関係ですが、1970年ごろまではある程度の相関性があったことが下図より見て取れます(図17)

図17:太陽黒点数の変化が温暖化の原因?(国立環境研究所地球環境研究センターサイトより)

 

しかしながら、それ以降は太陽の黒点運動とは関係なく、右肩上がりに気温が上昇していることも分かります。

このように、地球気温は複雑ないくつものサイクルが組み合わされて形成されていますが、それでも直近の気温上昇はそれらとは関係なく増加し続けています。

 

8.次世代の発電 ~自然循環エネルギー~

水力発電、太陽光発電、風力発電、潮汐発電など、技術開発が盛んに行われ、実用的なものが生み出されてきています。日本では経済産業省を始めいくつかの省庁はこれらを予算的にも規制的にバックアップをしています。しかしながら、これらはまだ十分ではなく、また企業の利益追求型にすべきものではないと思うのですが、ここは意見が最も分かれるところです。ある企業の利益として独占となる場合でも、仮に競合が出て価格競争が起きても、金銭的に導入できない国家は多く存在するでしょうし、またこれらの企業が事業として成り立たせるためには、更なる大きな投資が必要となります。これからの世界ではこのような技術はお金がある誰かのためだけではなく、すべての人々で共有していくべきであり、まずは国家が運営すべきであり、その後自治体に引き継いでいくべきものではないかと考えます。

水力発電は現在、大規模なダムで行われていますが、そもそもダムは大規模工事という地元に仕事を作るために造られた物であることは、ダムが存在しない場所にある川の流れを見れば分かります。日本の山はブナ類など葉が多い木が多種多様に存在し、そのような植生によるところが大きいと思うのですが、川が一年中枯れることはありません。反対にダムが上流に存在する川の一部で川が枯れるときがあります。ダムの最大の目的は「貯水」ですが、その目的のために人為的な制御を行い川の流量バランスを崩しているケースが良く見られます。日本は山がダムそのものなのです。現存するような巨大なコンクリートのダムはよほど雨と川が少なく低い山しかない場所でしか必要無いものです。発電のことを考えた場合、日本は標高差の大きい河川が世界でもまれなほど多いため、この特徴を上手く生かし1本の川の標高の違う何か所かで発電することができると思います。また、農業用水や工業用水で必要な水は、もっと地下水を活用すべきだと思います。地表を流れる川の数十倍の量が地下を流れているはずで、それらの一部を利用することでほとんどを賄うことが可能です。

太陽光発電は従来シリコンを基材とした太陽電池が作られてきましたが、最近はペロブスカイト構造の太陽電池が開発されています。シリコンはガラスと同等の性質であり、かつ、ある程度の厚みが必要なため割れやすいですが、ペロブスカイト構造では非常に薄い膜としても機能するため、軽くて割れないものができます。これらは壁などに貼りやすく、また円柱などにも配置できるそうなので、今後建築物の壁に貼るなど実用化が大いに期待できます。ただ、将来的にこれを最も効率よく使用するには、「葉っぱ」を目指すことです。木の枝に生えている葉っぱはそれぞれが太陽光を日々吸収し、光合成により生成した物質を枝を通じて木に戻し、全体に栄養を行きわたらせます。もし、それぞれの枝に葉っぱが貼り付けてあるような構造では、あれほど大きく育つことは難しいでしょう。ペロブスカイト構造の太陽電池は葉っぱのようにたくさんぶら下げて配置することを目指して欲しいです(図18)

図18:次世代太陽光発電木と発電葉

 

風力発電も、歴史的によく使用されてきたプロペラの構造から脱却したものが開発されてきました。最大のポイントは、様々な方向から吹いてきた風を使ってどれだけ効率よくプロペラを回せるかということになりますが、これは先端的なシミュレーション技術を用いて風を可視化し、プロペラに当たった後の風がカルマン渦を巻き、その渦が更にプロペラを加速する強いエネルギーになることを利用しています。従来よりはるかに小型化し、かつ静音化することが出来るため、各家庭におけるものになる期待が出来ます。

潮汐発電は、水力発電に似ていて、満潮時に水をため、潮が引いていくときに流れていく海水のエネルギーを利用する発電です。この発電方法の課題は、設備が金属の場合は塩害に合うこと、またコンクリートなどでもカキ殻などが付き、機能が侵食される可能性があることなどです。このような場合はまさに木材の出番です。木材であれば塩害に合わずに済み、カキ殻などが付いてもコンクリートなどに比べて軽いため機能に関係ある場所だけを交換しやすくなり、寿命が来たら海の底に沈めてしまえば漁礁になり、様々な生き物の住処としての役目をにない、朽ち果ててきたら様々な生物の餌となり数十年の時を経て本当の寿命を全うします。10年単位でこのような仕事が発生すれば、生態系を破壊するような余計な仕事を作らずとも回していける会社が増えます。

少し話がずれますが、熊本県の球磨川や福岡県の筑後川などは近年、毎年のように河川の氾濫の危険をともなうような大雨に見舞われています。このような場合、ダムのように貯水を行えると被害を軽減できる可能性もありますが、ダムが上流すぎると効果がないということも起こり得ます。河川の構造を見てみると、当然標高の高いところでは角度が急な場合が多く、標高が下がるにつれて緩やかになります。河川の氾濫が起こりやすいのは、このように角度が急なところから緩やかになった場所となります。出来れば、このような河川の中流域に比較的大きい遊水地が造れると下流域において河川の氾濫を防げます。しかしながら、このような遊水地が造れない場合は、「新しい川」を造るという方法もあると思います。

氾濫が起こりやすい場所の上流域において、河川の側面に水門を造り、ある一定以上の水かさが増すとそちらに流れるようにするのですが、普段は道路として用いることができる構造にしておけば、スペースを無駄にしないで済むと思います。多少側壁が高い用水路のような道路になるかもしれませんが、ある程度標高が下がったところで、別の川に戻したり、更に違ういくつかの道路に分岐させて流すということも今後は必要になる気がします。このような道路ができれば、水力発電や風力発電の配置も簡単になります。

また、水力発電も風力発電もどちらもプロペラを回して発電する構造のため、水陸両用のものを作っても良い気がいたします。上述の道路に配置する発電機であれば、車が近くを走るたびに発電したり、大雨が降り河川として機能させたときは水の勢いで発電したりといった具合です。

次世代のエネルギーデバイスは小型で持ち運びができるハイブリッドの発電+蓄電デバイスが有用となると考えられますが、これを実現するのに日本独自の様々な技術が必要となります。鉄腕アトムは核融合で動いていることになっていますが、これを実現するには非常に微量の気体、もしくは液体原料を少しずつ混合する必要がありそれがないと実現化しません。核融合が有用な技術になるかどうかはまだわかりませんが、いずれにしても大規模な発電所から各家庭や事業所や工場に送電しコンセントから電気を得るのではなく、身の周りに存在するエネルギーから発電し利用できるようにしたり、自然エネルギーを用いて作り出された燃料を車での移動に使用したり、熱を作り出すことに使用することを他の何よりも優先的に国をあげて行うべきだと思います。ロケットを造ることも夢がありますが、エネルギーの課題解決は優先順位が高いと感じます。

日本はその自然豊かな国土を持つことから上述した技術の実証をしやすい国であり、また技術力も備えています。中国は技術力が向上してきたとはいえ、化学やバイオテクノロジーなどの目に見えない技術や小型・精密なもの、あるいは職人技のような長年積み上げていくようなものについては、まだ日本に及びません。しかしながら、インターネットの普及による情報入手のしやすさや研究開発に対する向上心、予算規模などで日本を上回るため、近い将来追いつかれる可能性は否定できません。出来ることなら日本から新しい発想と有用な道具を発信し、米国も中国もサウジアラビアなど中東の各国も巻き込み、利益追求とは切り離し、世界中の人たちから喜ばれるものを作り出したいものです。

 

さいごに ~今後不足が考えられる二酸化炭素と酸素~

最後に、水を差すようになりますが、植物を増やしすぎると光合成が更に活発化し、二酸化炭素を大量に消費しはじめます。現在の大気中の二酸化炭素は先に挙げたように0.04%しかなく、地球の歴史上もっとも低い濃度で推移しています。二酸化炭素がすべて消費されると、光合成を行うことが出来なくなり、合わせて酸素濃度が徐々に減少しはじめます。酸素濃度に最も敏感な生物として象、クジラなどの大型の動物と、脳が発達しているヒトから絶滅していきます。逆に二酸化炭素を増やすために燃焼を行うと温暖化することになります。なぜこのようなことが起きているかというと、二酸化炭素という無機物が光合成により有機物に変化し、質量を持つことにより地下や海底に沈殿していくからです(図19)

図19:第二部-1-地球の歴史 第4章大気と海の歴史 1.大気の変遷(山賀進のWeb siteより)

 

解決策として土などから二酸化炭素を燃焼以外の方法で効率よく作り出す技術を見出すことも考えられますがこれはたかが知れています。

二酸化炭素を大きく増やすイベントは大規模な火山活動くらいしかないため、隕石の衝突を待つか、爆発物を地下で用いてマグマの噴出を意図的に行うかなどになりますが、いずれにしても険しい道のりのため、そこに行きつかなくても良い方法として私たちが出来ることは、現在をエネルギー消費のピークとして、資源を無駄使いせず生活方法を考え直すことと、エネルギー量のコントロールを可能にする技術導入が重要となることでしょう。

(~2023.8.25)