Tycho wide TIRF 広域導波路照明装置 1細胞分泌定量デバイス

当社はこのたび 広域全反射照明ステージ「Tycho Wide TIRF」を開発いたしました。

本装置は光ファイバーを並列化し発光出力部のサイズを 厚み0.1mm x 幅15mm に設計し、厚さ0.17mmの標準カバーグラスの側面からも効率よく幅広い光を導入することが可能となり、観察面の広域において全反射を起こすことができます。

このカバーグラス内の全反射を起因に、トンネル効果によってカバーグラス表面の極近傍(~150nm)にエバネッセント光が発生します(図1)(図2)

この光を励起光として、カバーグラスの表面極近傍の蛍光色素のみを光らせます。

   

図1 全反射概要                 図2 wide TIRFの上面図

カバーグラス表面に結合させた抗体などを用いて、特異的にたんぱく質やウイルスなどを

補足し、蛍光ラベルやプローブを用いて高感度に多種類を検出することが可能となります。

低倍率レンズを用いて広い視野を観察したい場合では、通常、被写界深度が深く、

蛍光観察時に深さ方向のノイズを拾ってしまいます。

本技術を用いると、ピントの非常に浅い領域のみ(カバーグラス表面の極近傍のみ)を

観察するため、S/Nの非常に高い画像を得ることが可能となります(図3)(図4)

本技術と高感度プローブを組み合わせることにより、従来観察することが不可能だった

1細胞の作り出す分泌物の定量や分子、ごく少数のウイルスなどを検出することが可能と

なります。

 

 

 

 

図3 極近傍のみを観察

 

 

 

 

 

図4 wide TIRF 照明部外観

 

 

<迅速診断装置への応用① ~ウイルス・細菌の網羅的高感度観察~>

子どもは免疫機能が確立しておらず、また、園や学校で集団生活を送る機会も多いため、発熱したりせきが出るというような風邪様の症状が頻繁に起こります。

その際に自宅近くのクリニックに行き、インフルエンザや溶連菌などのいくつかの限られた病気の検査キットを用いて、陽性(+)か陰性(-)の結果により診断を行います。

陽性の場合は決まった薬を用いて治療を行いますが、多くの場合は陰性が出ます。その時、医師は世間で流行している病気の状況や経験に即する見立てで病状を判断します。しかしながら、これがいつも正確な診断であるとは言い切れません。また、上述の検査なども症状が発生してからある程度の時間を経ないと検査キットの検出感度の問題で確定できない場合が多くあります。

 

<迅速診断装置への応用② ~救急患者の迅速病状判定>

一人暮らしの年配者が増えることで救急要請(119番通報)が増加することも想像できます。

患者が「胸が苦しい」「右腹部が痛い」など自分で症状を説明できる場合は、駆け付けた救急隊員が初動の対応や検査を行うための最も参考となる情報となりますが、駆け付けた時には、患者が倒れて意識が無いことなども少なくありません。

そのような時に、少量の血液などから血液中のたんぱく質を網羅的に高感度で検出することが可能となると、例えば急性膵炎なのか、心筋梗塞なのかなどが迅速かつ正確に判定をすることが可能となります。

このことにより時間が勝負となる救命救急時の対応(応急処置・病院選び・治療方法・手術)などが的確に行われ、医療の質が向上します。

 

<迅速診断装置への応用③ ~アレルゲンや毒素の高感度検出>

大量消費、大量生産時代の昨今、身近にある食品は工場で大量生産されたものがほとんどです。また、穀物や畜産物なども同様に大量生産を行っています。消費需要に対応するためには仕方がないのですが、工場では食品製造の過程で抽出や精製の過程を経ます。その際には溶剤や酸・アルカリ溶液を使用し、最終段階までに除去を行いますが、そのような溶剤などの残留や副産物が体に悪影響を及ぼす可能性は否定できません。また、同様に穀物の残留農薬や、食肉・乳・鶏卵などに含まれる飼料中の各種薬剤も残留している可能性が少なからずとも存在します。

しかしながら、現在の計測技術では極々微量の化合物や元素を検出することに限界があります(fmol~amol:10,000,000~10,000分子以上)

細胞には更に極々微小量(数分子)であっても反応する機能があります。

細胞表面のレセプターたんぱく質に化合物が1分子結合するだけでも反応が起こると考えられます。ある種の昆虫の性ホルモン嗅覚機能などは非常に高感度であることが知られています(2km以上離れたメスを検知する等)

細胞を1個づつマイクロデバイスに並べ、細胞センサーとして検査を用いる事を想定し研究が進められている例もあります。

https://www.jst.go.jp/pr/jst-news/pdf/2015/2015_05_p08.pdf

<当社が目指す確定診断検査キットの概要>